リハビリ専門職が就職・転職前に抑えておきたいポイント【介護老人保健施設】


医療や介護分野と幅広く活躍する理学療法士、作業療法士、言語聴覚士(以下、「リハビリ専門職」)にとって、介護老人保健施設への初めての就職や転職を考える際、「どのような業務内容なのか」「自分に合うだろうか」と不安を感じる方も多いのではないでしょうか。

この記事を読めば、以下の内容がわかります。

・「介護老人保健施設とは」

・「リハビリ専門職の業務内容」

・「介護老人保健施設のメリット・デメリット」

・「介護老人保健施設で求められるスキル」

 

介護老人保健施設への就職や転職を考えるうえで、ぜひ参考にしてください。

 

 

 

1.介護老人保健施設とは

介護老人保健施設(以下、「老健」)とは、介護保険制度に基づいて運営される施設です。

老健で働くうえで、介護保険制度は理解しておくべきポイントです。制度の基本を理解していないと、利用者に誤った説明をしてしまったり、必要なサービスを提供できない可能性があります。

正しい知識を持つことで、制度に基づいた適切なケアが提供でき、利用者やその家族の信頼を得ることができます。以下、病院と比較して解説しますので、しっかり押さえておきましょう

 

(1)定義および法的根拠

老健は、「要介護者であって、主としてその心身の機能の維持回復を図り、居宅における生活を営むことができるようにするための支援が必要である者に対し、施設サービス計画に基づいて、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設」と介護保険法第8条第28項で定められています。

 

(2)病院との違い

病院は「適正な診療を受けることができる便宜を与えることを主たる目的として組織され、かつ、運営されるものでなければならない」と医療法第1条の5により定められており、「治療後の身体機能を回復する」といった目的がある。対象者は、子どもから高齢者まで様々です。

一方、老健では、「高齢者の在宅復帰を支援する」ことを目的とし、対象者は原則65歳以上で「要介護1」以上。または、40歳から64歳の特定疾病による要介護認定を受けている方が対象としています。病院の入院患者よりも比較的症状が安定しているという特徴があります。

 

2.リハビリ専門職の業務内容

(1)老健の主な業務内容

老健のリハビリ専門職の主な業務内容は以下のとおりです。

①利用者に対する評価

②リハビリテーション計画の作成

③リハビリの実施・指導

④ADL、IADLの指導及び環境設定

⑤利用者家族への相談・助言

⑥カンファレンスの参加

リハビリ専門職は、それぞれの専門性を活かし活動します。理学療法士は主に運動機能の維持・向上、作業療法士は主に精神・心理面を支援、言語聴覚士は主にコミュニケーションや嚥下機能の維持・向上を図るために個別や集団でのプログラブを実施します。

老健では、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のすべてがそろって配属されていることが少なく、理学療法士でも作業療法士の役割を求められることがあります。

 

(2) リハビリ専門職の業務

老健ではリハビリに関わる業務以外にも、施設内行事に関わることがあります。

毎月の誕生会

納涼祭

文化祭

敬老会

クリスマス会

などが挙げられます。

 

3.介護老人保健施設で働くメリット

(1)ワークライフバランス

老健では残業が少ないことがメリットです。病院では勤務後の症例検討会や研究が行われることも多いですが、老健では比較的少ないといえます。給料は施設によって異なりますが、「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」によると、リハビリ専門職の平均月額は30万程度である。

(参考:令和6年10月25日時点の熊本県内で募集されている老健の給与は平均月額23~28万円です。)

 

(2)高齢者特有のリハビリができる

老健は高齢者主体となるため、高齢期疾患に特化した知識・スキルが身につけることができます。今後、介護分野で活躍したい方にとって、適した職場といえるでしょう。

近年では、高齢者をはじめとした地域住民が主体となり、介護予防やフレイル予防などを目的とした「通いの場」で、リハビリ職の専門性が求められる場面が増えてきています。

地域に積極的に関わることで、施設のPRにもつながります。

 

(3)多職種連携により幅広い知識が身につく

医師、看護師、他リハビリ専門職、介護職員と連携して患者のケアを行うため、多職種連携の重要性を体感できます。さまざまな視点を学びながら、より効果的な治療が見えます。

また、自治体や福祉事業者などと関わる機会もあり、さらに幅広い知識が身につきます。

 

4.介護老人保健施設で働くデメリット

(1)リハビリの時間が少ない・知識が偏りやすい

病院のリハビリでは、症例数が多く、患者様の入れ替わりも早いです。しかし、老健では病院と比較してリハビリの時間が短くなる傾向があります。

一般的には、1人当たりのリハビリ時間は、老健では1回あたり20分程度、病院では20分程度を2~3回行うことが多いです。病院ではさまざまな症例を経験できるため、その分知識も増えるでしょう。一方で、老健は高齢者が対象のため、身につくスキルや知識が偏りやすい傾向があります。

しっかりとリハビリを行いたい方や、さまざまな症例を経験したい方にとっては、物足りなさを感じる場合があります。

 

(2)介護業務を行わなければならない場合がある

老健によっては、リハビリ専門職がオムツ交換やシーツ交換などの介護業務を担わなければならない場合があります。この背景には、介護業界での介護士不足が一因として挙げられます。

この点については職場ごとに大きく異なるため、介護業務に抵抗がある方は事前に確認するようにしましょう。

 

(3)病院への転職が難しい

老健では対象者が高齢者に限定されますが、病院では子どもから高齢者まで幅広い対象者がいます。そのため、新卒者が先に老健で就職した場合、高齢者以外のリハビリ経験が得られず、将来的に転職が難しくなる可能性があります。

今後、病院勤務を考えているのであれば、新卒で老健に就職することを慎重に検討してみてもよいでしょう。

 

5.介護老人保健施設で求められるスキル

(1)コミュニケーション能力

長期的に利用者やその家族と関わる中で、信頼関係を築くためには適切なコミュニケーションが不可欠です。

コミュニケーションが不足していると、誤解や不満が生じ、サービスの質が低下する恐れがあります。良好なコミュニケーションスキルを持つことで、利用者のニーズを理解し、信頼関係を築くことができ、サービスの満足度も向上します。

また、施設内ではリハビリ専門職以外のスタッフとも多くコミュニケーションをとる必要があります。多職種の意見も尊重しながら、円滑に業務を遂行していくことが求められます。日頃からのコミュニケーションを意識することが大切です。

 

(2)リスク管理と事故防止の知識

介護現場では、転倒、誤嚥、感染症などの事故が発生するリスクが常に存在します。これらのリスクに対処するための知識がないと、重大な事故や問題が起こる可能性が高まります。リスク管理の知識を持ち、予防策を徹底することで、事故を防ぎ、利用者の安全と事業所の信頼を守ることができます。

 

(3)認知症に関する知識

厚生労働省「2022(令和4)年国民生活基礎調査の概況」によると、要介護となった原因の第1位は「認知症」であり、介護現場では必ず関わることになるでしょう。

認知症の利用者は特有の行動や症状を示すため、これに対する適切な対応が求められます。認知症の理解が不足していると、利用者の不安や混乱を増幅させ、問題行動を引き起こすことがあります。認知症の症状を理解し、適切な対応をすることで、利用者が安心して日常を過ごせるようになります。

 

まとめ

老健への就職や転職で抑えておきたいポイントをご紹介しました。

介護保険制度に基づいて運営される施設であり、対象が高齢者に限定されますが、高齢者に特化したリハビリを行いたい方や、今後地域住民への介護予防の普及活動を中心に考えているかたにオススメです。

また、給料は全国の平均月額より低い傾向にありますが、残業時間が少ないことが大きなメリットの1つと言えます。

なお、施設によっても形態や待遇がことなります。面接の際には、後悔しないよう、トラブルとならないよう事前に相談内容を整理しておくことが大切です。

本記事で解説した内容を参考に、老健への転職に興味がある方は検討してみてはいかがでしょうか。

 

【経験・経験】
・私立法学部 卒業
・アミューズメント業界にて5年勤務(企画・営業)
・私立理学療法学科 4年制学校 卒業
・公立総合病院、介護老人保健施設にて10年勤務
・地域住民の生きがいづくり場の立ち上げ支援 3年目
・年30回の講演会と健康に関する個別指導 5年目